やっぱり来てほしい正月

とうとうこの日がやってきた。
父と母と、入院、施設へ入所となって以来、初めての実家での外泊。しかも同時にそろってだ。
父は入所以来、家に帰ることばかり気にしていた。何度か「外出」という形で、家で食事会をしたことはあったが、泊めたことはなかった。母も同様だった。

父の誕生日が1並びの正月元旦。母も旧成人式の1月15日。そのため、かつて私が内地にいる頃、帰省するのはいつも運賃が最高に高い年末年始だった。祝い事と重なっていたのでそれが当たり前のようだったのだ。

そして、正月が近づいてきたこの一カ月ほど前から、父はどことなく落ち着かず、施設のスタッフに何かとクレームをつけていたようだ。自分を軽視しているとか、一緒のユニットにいるおばあちゃんばかり世話して、自分は無視されているとか、子供みたいなことを言ってスタッフを困らせてきたという。
昔の尊厳ある父は一体どこへ行ってしまったのか?しまいには私に対し、スタッフの中の、お気に入りの子にお礼をしてくれと言っているのにしないからだとまでいう始末。いつからそんな考えになってしまったのかとあきれてしまう。

果たして認知症のせいなのか?言うまでもなく認知症と言うのはいろんな症状があって、しかも個人差があるので何が原因かも含めてわからないことが多い。じっと観察を続けて判断していくしかないのだ。一人一人の症例の数だけ認知症という病気の数があるのかもしれない。

普段の父は、昔からそうなのだが、よく喋り相手を飽きさせないサービス精神の旺盛な人だ。なので、どうしてこの人が特別養護老人ホームにいるのか不思議に思われるほど普通の人と変わらない。
ところが、これが夜になると豹変する。
昨夜も実際あったことだが、序章は先ず下々の不始末。便器の回りや床にカラーを施してくれてさんざん掃除に時間を費やされた後、今度は深夜の12時過ぎ、父のベッドでごそごそ音がするのでそっと覗いてみると、不自由な体でベットから降りようとして、半身ずり落ちそうになりながらもがいている。「どうしたのお父さん?おしっこかい?」・・・「何か変だ、誰か近くにいて危険だから見て来い!早く調べて来い!」・・・「こんな時間誰もいないよ。夢を見たのだろう?」・・・「そんなはずないだろう。早く、早く、火事かもしれないから見て来い!」・・・
こんな会話が1時間くらい続くのだ。

その後も繰り返しぶつぶつ言いながら起き上がろうとしたりして落ち着かない。何度もそのたびに観察者は仮眠から覚めて、そっと見つからないように見守るしかない。
一緒にいてくれたki-は、「お父さんは、周りで何か起こっていると信じているので、否定してもダメなのよ」そんなときは、「そうだね、何かあるかもしれないから調べて来るね・・・でいいのよ」と言ってしばらく時間を置く。

しかし、これが毎日ならたまらないだろう。観察者は自分に落ち着けと言い聞かせながらも、つい「そうやってみんなを困らせてきたのかい?」と興奮した患者をを責めてしまう。患者はますます興奮して寝てくれなくなる。理性と感情が交互にやってくるのでこっちまで制御できなくなってしまうのだ。

その点、母は寝たきりだ。父の横に、久しぶりに車いすのまま座らせても全然喋らない。父は大きな声で「頑張っているか?調子はどうだ?何か喋れよ!」と畳みかけるが全くの無言。時々顔をしかめながらも全然相手にしないで目をつむってしまう。あんなに仲が良かった夫婦なのに・・・。

正月元旦。二日も前からki-と口で罵り合いながらも、用意してくれたおせちやお雑煮を並べ、「お正月!、そしてお父さんのお誕生日オメデトウ!🎊」とのki-の発声で乾杯🍻!ki-が作ったケーキのイラストを父に持たせ、みんなで写真をパチパチ。
母は自分から決して手を出そうとしないが、各地から送られてきたカニや刺身、だしの利いたお雑煮を食べ、ようやっと一度二度、ほほ笑んでくれた。父もこんなうれしい正月は生まれて初めてだと、これ以上ない喜びを見せてくれた。

ホッとしたのは言うまでもない。何とか正月早々救急車のお世話にならず、一晩泊めて父、母を送り返すことができて本当に安堵した。二度と来てほしくない正月だった。(これが本音か)

ki-はいつも「私をこんなところに連れてきて、いつでも帰るからね」と言いながら、私は私で「ア~いいよう~」と小声で心にもないことをつぶやくも、そんなことになったら大変だ。彼女がいなかったらとてもこんな素晴らしい正月は迎えることはできなかっただろう。また迎えたいという正月を。

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