去年の今頃Ⅲ

母が北見の日赤病院に入院している頃、父は実家で一人、私たちが来るのを待っていた。
朝は早朝7時、私は昨夜から用意がされている朝食を食卓に並べ、その足で職場に出かけた。
昼はki-が様子を見に行き、昼食を食べさせ、そして夕方は私たち二人が行って父の晩酌を付き合った。
そんな毎日だった。

何よりも気がかりだったのは、私たちがいない間に半身麻痺の父が動き回り、転んだ挙句起き上がれずにいる状態を想像することだった。

以前、母がまだ入院する前のことだが、こんなこともあった。
ある日の夕方近く、私たちが訪ねると、母が窓際でうろうろしている。母は、「お父さん、どこ行ったんだろう?」と不安そうに言う。・・「外で草でもとっているのかい?」などとあちこち探すと、なんと浴室のお湯が抜けて空になった湯船の中で立てなくなり、裸のまま放置されていたのだ。父は大声で「お前ら何をやっていたのだ!」と叱りつけるが、私はなぜこうなっているのかすぐには理解できなかった。この状態で3時間は経過しているという。
その間、母は父が入浴していることを忘れ、窓際で外を見ながら父を待っていたという。

そんなことがあって、誰よりも母を頼りにしていた父の、母に対する信頼は決定的になくなってしまった。
あれだけ仲が良かった二人に喧嘩が多くなったのはそれ以降のように思う。

父は一人で生活するようになってもよく動いた。そしてよく転んだ。
夜、私たちが帰宅してくつろいでいる時、電話が鳴って、「転んでしまった。血が止まらない。来てくれ」・・といったこともあった。
近所の人も、父が外で押し車引きながら草取りをする姿を見て、よくやるねえと感心していた。
私たちには、何で一緒に暮らさないんだろう?・・と言われているように聞こえたものだった。

何度も転ぶことを繰り返しているうち、それからしばらくして父まで入院する羽目になってしまった。
慢性硬膜下血腫と言う診断で即入院だった。


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